アメット


 これに関しては、追々やっていけばいい。

 まず、今日やらないといけないのは雑貨品を購入するのこと。

 二人はエレベーターを使い三階へ向かうと、シオンはクローリアに気に入った店に入っていいと促す。

 彼の言葉にクローリアは頷くと、ゆっくりとした歩調で店を見て回る。

 すると一軒の店の前で立ち止まり、並べられている商品を眺める。
 クローリアの目に止まったのは、花柄のイラストがプリントされたマグカップ。

 余程気に入ったのか手に取ると、目を輝かしながら眺めている。

 その姿にシオンは「買う?」と尋ねつつ、値段を確認する。

 別に高い代物でも構わないのだが、いかんせんクローリアは値段を気にしてしまう。

 幸い、このマグカップの値段は手頃なのでクローリアが悩むことはない。

 シオンが予想していた通り一度値段を確認し高価な物ではないとわかると、オズオズとマグカップを差し出す。

「宜しいですか?」

「勿論」

「有難うございます」

「他は?」

「えーっと、見て来ます」

「ゆっくりでいいよ」

 クローリアはシオンの言葉に頷くと、嬉しそうに店の奥へ向かう。

 一方シオンは、彼女が欲しい物を選び終えるまで店の品物を見て回ることにする。

 今のところ特に必要な物はないが、目的もなく品物を見ているのも楽しく、このような物が女の子に人気だと学習する。

(食器を買わないと)

 シオンの目に止まったのは、淵に細かな模様が描かれた食器。

 今、自宅の食器棚に納められているのはシオンが使うのみで、お客様専用の食器類があるわけではない。

 目に止まった食器を手に持とうとしたが、クローリアの好みもあるので勝手に選ぶわけにもいかない。

「クローリア」

「何でしょうか」

「食器だけど……」

「ある物で構いません」

「いや、家にはない」

 だからクローリア専用の食器を買わないといけないと言うと、クローリアは可愛らしい食器を探し出す。

 彼女が眺めているのは先程シオンの目に止まった食器ではなく、全く別の品物だった。

 彼女の反応にシオンは、勝手に先程の食器を購入しなくてよかったと心の中で呟く。