「服と雑貨、どちらが先がいい?」
「えーっと、雑貨で……」
「わかった。さて、何階か……」
「何階もあるのですか?」
「このモールは、四階建て」
「そんなに……」
「あっちが吹き抜けになっているから、階層がわかり易い。今いるのが一階で、ほらエスカレーターがある」
エイルの説明に、クローリアは頷くしかできない。
巨大ショッピングモールに来た経験もなければ、吹き抜けの建物の中に入ったのはこれがはじめて。
また点灯している人工の明かりが眩しく、モール内に流れている音楽や買い物をしている人達の話声が耳を楽しませる。
「雑貨類は、三階だ」
案内板を眺めていたシオンはそのようにクローリアに伝えると、エスカレーターを使い三階へ向かおうとする。
だが、エスカレーターに乗った経験がないので、クローリアは寸前で立ち止まってしまう。
上手く乗れるのか、大丈夫なのか――見慣れない物に躊躇いを持つ。
「どうした?」
「あ、あの……」
「ああ、そうか」
クローリアが何を言いたいのか理解したのだろう、他の客の邪魔になってはいけないとエスカレーターから離れる。
周囲の耳に届かないように、シオンはエスカレーターに乗るのが怖いのか尋ねる。
彼の心遣いにクローリアは頷くと、乗るタイミングが掴めないと話す。
「そうか」
「……すみません」
「いや、謝らなくていいよ。はじめて乗るのなら、タイミングがわからないのは仕方ないよ。乗るのを失敗したら転倒し、怪我をしてしまう。安全第一で、エレベーターで行こうか」
「お願いします」
「でも、いずれ乗れるようにならないと。エスカレーターを設置している店は多いし、此方で暮らすのだから」
何回かエスカレーターを乗り、タイミングを身体が覚えれば問題ない。
ただ人数が多い時間帯に練習するのは他の人の通行の邪魔になってしまうので、人の少ない時間を狙わないといけない。
またクローリア一人だと危ないので、一緒に付き添わないといけないだろう。


