店員はクローリアに似合いそうな服を何着か用意し、試着を進めてくる。
一着一着帰着し自分の身体に合うか確かめていくが、なかなかこれがいいと決めることができない。
勿論、全ての服が不満足というわけではないが、値段が気に掛かってしまい選ぶことができない。
クローリアの気持ちに気付いていない店員は、上客の家政婦ということで丁重に扱い、値段が張るいい物を進めていく。
クローリアが迷えば迷うほど、店員が持ってくる服が増えていく。
何か選ばないといけない状況に、クローリアは目に付いた服――三着を選び店員に差し出す。
「これを……」
「宜しいですか?」
「お願いします。それと、この中のどれかを着ていっていいですか? これ、借り物でして……」
「そういうことでしたら、特別に構いません。では、この中から一着選んで下さい。後は、支払いをしてきます」
「では……」
クローリアが選んだのは、チェック柄で縁取られたワンピースとショートパンツ。
それを受け取ると試着室で着替え、借りた服を持ちながら会計をし終えたシオンのもとへ行く。
そして、クローリアが真っ先に発したのは「高くてすみません」というのもので、シオンを笑わせた。
「いいよ」
「で、ですが……」
「これくらい、支払えなくもないし。で、次に行こう。買わないといけないのは、沢山ある」
そのように言われると、クローリアは何も言えなくなってしまう。
受け取った袋に着ていた服を入れると、シオンと共に店の外へ出て行く。
相当高い買い物をしたのだろう、クローリアに服を選んでくれた店員の他に数名の店員が、シオンに向かって挨拶し頭を垂れていた。
「それ、似合うよ」
「そ、そうでしょうか」
「そういえば、スカートなかったね」
「スカートは仕事に差し支えそうな……部屋の掃除をしないといけませんので、此方の方が便利です」
何事も仕事中心に物事を考えてしまうクローリアに、シオンは買い物に行く時くらいお洒落をしてもいいのではないか。
確かに行き来している女性の大半が、スカートを穿いている。
クローリアはシオンを一瞥すると「穿いた方がいいですか?」と、小声で質問をしていた。


