アメット


「そういう時は、事前に連絡する」

「わかりました」

「で、ちょっと待っていて」

 そう言いつつ、シオンはドライヤーで濡れた髪を乾かしていく。

 髪を全体的に掻き揚げるような乱暴な乾かし方をしていたが、そのような乾かし方の方が時間が掛からないのだろう、瞬く間のうちに髪が渇いていく。

 そして最後の仕上げとばかりに、手櫛で軽く整える。

 シオンはドライヤーを片付け普段使用しているバックを手に取ると、クローリアを連れマンションの外へ向かう。

 中心部分へ行ったらクローリアの服と雑貨物を購入して、その次に美味しい食べ物を食べる。

 その後は、何をしようかとシオンは頭の中で計画を練っていった。




「賑やか」

 中心部に向かうにつれ、行き交う人々の数が増していく。

 最下層ではこれだけの人数を見たことはないので、クローリアは全てのモノに対し興味を抱く。

 あれは何か、これは何に使うのか――

 その結果、いつの間にかシオンとの間に距離が生まれ、離れて歩くことになってしまう。

 クローリアが人混みに飲み込まれ姿を消してしまったことに気付くと、シオンは慌てて彼女の姿を捜し回る。

 来た道を辿りつつ青色が混じった銀髪の少女を捜していると、ショーウィンドーに並べられている品物を眺めているクローリアを見付け、思わず嘆息してしまう。

「いた」

「シオン様?」

「逸れた」

「す、すみません」

「一体、何を見ていた?」

「これを――」

 指で示すショーウィンドーを飾られていたのは、可愛らしい一着の服。

 女の子のファッションには疎いシオンだったが、この服はクローリアの髪の色と合い着たら似合うだろうと思う。

 何度かクローリアと服を交互に眺めると、これが欲しいのなら買ってもいいと伝える。

 シオンの突然の提案に、クローリアは即答をできないでいた。

 確かにショーウィンドーに飾られている服は可愛らしいが、高い値段なので購入して貰うわけにはいかない。

 クローリア自身安い服でいいと考えていたので、別の服でいいとシオンに言い丁重に断るのだった。