クローリアはシオンから櫛を借りると、鳥の巣状態の髪を梳いていく。
シオンの見立ての通り髪の傷みが酷いらしく、梳いている途中で何度も髪が引っ掛かってしまい顔を歪め苦痛に呻く。
それでも綺麗にしたいという思いの方が勝るのか、懸命に髪を梳いて整えていく。
「梳かし終わったら、寛いでいて」
「シオン様は?」
「風呂」
「私が、先に……」
「それは、気にしなくていいよ。テレビでも見ていてくれればいいけど、寝室には入らないで」
「寝室は?」
「あっち」
「わかりました」
シオンの言葉に従い、クローリアはソファーに腰掛ける。
大人しく腰掛けている彼女の姿を確認するかのように頷くと、最下層の汚れを落としに風呂場へ向かう。
シオンが風呂場へ向かった後、クローリアはテレビの電源を入れようとするが、いまいち使用方法がわからない。
どのように使用すればいいかとあれこれと試すが、やっぱりわからない。
これ以上弄っては壊してしまうのではないかと思ったのだろう、クローリアはテレビを観るのを諦めることにした。
だからといってフラフラと勝手に私物を見学するわけにはいかないので、静かに待つしかできない。
そして、十数分後――
シオンが風呂から出て来た。
「あれ? テレビは」
「使用方法が……」
「ああ、御免」
クローリアが使い方をわかっていると思ったので、特に教えることはしなかったが、彼女は最下層の住人。
テレビ自体あることが珍しく、殆どの家庭が持っていない。
シオンは悪いことをしてしまったと詫びると、テレビの電源を入れどのような番組を観たいのか聞く。
「どのような番組がやっているのですか?」
「そうだね……」
一通りザッピングし、現在やっている番組を簡単に説明していく。
その中でクローリアが一番食い付いたのは料理のレシピを教える番組で、色彩豊かな料理の数々に瞳を輝かしている。
また、何度も練習しシオンに喜んで貰えるような料理を作れるようになりたいと、目標を持つ。


