シオンに髪を乾かされていることで緊張しているのだろう、クローリアは微動だにしない。
俯きながら懸命に現在の状況に耐え続けるが、はじめての体験にどうしていいかわからない。
何か言葉を掛けた方がいいと思われるが、頭が混乱しているので上手く纏まらない。
一方シオンは、クローリアの髪質が気に掛かる。
物が不足している最下層できちんと手入れするのは難しいだろうが、彼女の髪は全体的に痛みが酷い。
枝毛が何本も発見され、無数の切れ毛も目立つ。
これを見ていると、クローリアがどれほど苦労してきたのかわかる。
シャンプーやリンスで整えるより、痛んでいる髪を切ってしまうのがいいだろう。
シオンは美容関係に詳しくはないので、美容院に通わせプロに任せてしまった方がいい。
一体どれだけ切られてしまうかわからないが、痛んだ髪をこのままにしておくわけにはいかない。
「美容院、予約する」
「髪が、何か?」
「痛んでいる」
「自分では……」
「気付かなかったかもしれないけど、酷く痛んでいる。綺麗に切り揃え、整えないと勿体ない。これだけ綺麗な髪色を持っているんだし、まだ十代の女の子なんだからお洒落をしないと」
クローリアは自分の髪をあまり気にしていなかったが、シオンにそのように言われると気になってしまう。
また、綺麗になることができるのなら綺麗になりたいという女心が働き、シオンの提案を受け入れるように頷く。
彼女の返事にシオンは「明日、予約する」と言い、乾かすのを終えた。
「有難うございます」
「まだ」
「これ以上は……」
「髪を梳かす」
「いえ、本当に……」
「髪を梳かさず買い物に行ったら、目立ってしまう。今の髪は、凄いことになっているから」
「そんなに……」
「鏡は、あっちに」
シオンが指差す方向に設置されている鏡に自分の姿を映した瞬間、クローリアは唖然となってしまう。
確かにシオンが言っているように現在の髪型は、完全に鳥の巣状態。
このまま外に出たらいい笑い者になってしまい、まともに外を歩くことができなくなってしまう。


