脱水まで全自動なので、何かで時間を潰しクローリアが出て来るのを待てばいい。
といって特にこれといってやることはないので、シオンはコーヒーを淹れソファーで寛ぐ。
それでもクローリアがきちんとやっているのか気になるらしく、時折風呂場の方向に視線を向ける。
(何をしているのか)
自分の行動が愉快だったのだろう、シオンは苦笑しかできない。
それだけクローリアの身が気に掛かり、高い文明文化に付いていけるのか心配になってしまう。
しかし家政婦になって欲しいと上の階層に連れて来たのだから、この世界に適応できるように気配りしないといけない。
(まあ、ゆっくりと)
焦ってもいいことはないと知っているので、確実に一歩ずつ進んで行けばいい。
クローリアは今までの生活が一変するのだから、戸惑うことも多い。
先程のお風呂の件といい、ひとつずつ教えていけばいい。
そう自分に言い聞かせると、シオンは熱々のコーヒーを胃袋に流し入れた。
二十分後――
クローリアが、タオルとドライヤーを手にシオンの前に姿を現す。
やはり大きい男物の服ということもあって裾と袖口が長かったが、だからといって着られないわけではない。
ふと、綺麗になったクローリアの姿にシオンは、違和感を覚える。
そう、髪の色が違っていた。
「あれ、髪が……」
「元は、この色です」
滅多に風呂に入らなかったので髪が土埃で汚れてしまっていたのか、風呂に入ったお陰でクローリアの本来の髪の色は薄い青が混じった銀と知る。
予想以上に美しい髪色に、シオンはパーティーに集まっていた欲望塗れの女性が見たら嫉妬するだろうと、彼女達の顔を思い浮かべる。
ふと、クローリアの髪から水滴が滴っていることに気付く。
ある程度はタオルで吸い取ったのだろうが、クローリアの髪は長いので全ての水分が吸い取れるわけではない。
ドライヤーを使って乾かさなかったのか尋ねると、沢山の水を使ってしまったので心苦しいと話す。
「乾かさないと、風邪をひいてしまう」
「で、ですが……」
「金は気にしなくていい」
ヒラヒラと手を振りクローリアをソファーに座らせると、ドライヤーの電源を入れ頭部に温風を送る。
恋人でもない女の子の髪に触れるのは憚られるが、シオンが乾かさないとずぶ濡れの状態でいるかもしれないので、今回だけは代わりに髪を乾かしてやることにする。


