「で、家政婦ですが……」

 いざ、家政婦を雇うとなると、どのような手続きをすればいいか、シオンはわからない。

 それならA階級だと全面的にアピールしているイデリアに尋ねれば、喜んで説明してくれるだろう。

 そのように考えたシオンは、丁寧な口調で家政婦を雇うに必要な手続きの仕方を尋ねる。

「知らないのか」

「……家政婦に縁がない階級で……」

 案の定シオンの読みは正しく、イデリアの口許が嬉しそうに緩む。

 それにより明確となったのが、イデリアの本心。

 これいついては不快感の方が強いが、その反面ご機嫌取りの方法を学習する。

 何かがあった場合「A階級の人間」という部分を持ち上げ、褒めればいい。

 何と、簡単な――

 しかし、言葉に出すことはしない。

 イデリアの話では、家政婦に雇う者は雇い主より階級が下の者でないといけない。

 そして雇われた者の生体データーは一か所で管理され、家政婦の証となる専用の腕輪を装着される。

 だからといって本来持つ階級が上がるわけではなく、下の者はいつまで経っても下のまま。

「お前の場合は、C階級の人間だ」

「最下層は……」

「最下層!?」

 何を言い出すのか――と言わんばかりの表情を浮かべ、イデリアは鼻で笑う。

 確かに最下層の住人もドームで暮らす一員だが、彼等のことを普通の人間とは見ていない。

 ドームの付属品としか考えていないのか、あのような奴等を雇いたがるとは気が狂っていると言い出す。

「ですが、彼等は……」

「そういえば、最下層に行っていたな」

「……はい」

「それで、肩入れか?」

「そういう訳では……」

「なら、何だ」

「ただ、雇った者がいるか……と」

「そのような者はいない」

 イデリアの話しでは、好き好んで最下層の住人を家政婦に雇う者などいない。

 働かすのなら多少学があった方が便利で、無学の者を雇い入れるほど余裕があるわけでもない。

 だから多くの者は自身の階級の下の者を家政婦として雇い入れ、働かしているとイデリアの説明は続く。