同情してくれる友人に対しシオンは顔を緩めると、そのように言ってくれたことに礼を言う。
しかし瞬時に緩んでいた表情が変化し、無表情に近いものに戻ってしまう。
アイザックの顔を見た時、脳裏に「統治者」という単語が過ぎり、彼の本音を探ろうかどうか迷う。
「ひとつ聞いていいか?」
「うん?」
「もし、上司と部下になってしまったら、どうする?」
「僕とお前が?」
「……そう」
突拍子もない質問に、アイザックは即答できない。
だが、シオンが自分の上司になることは悪くはなく、それについて自分はどうこう言うことはないという。
また上司になっても今のような友人関係を続けてくれるのならそれでいいと、アイザックは笑いながら話した。
「……そうか」
「で、出世したのか!?」
「いや、全く」
「驚かすな」
かっこいい言い方をしていたが、アイザックはシオンに先を越されてしまったと内心動揺を隠せないでいた。
友人の本音にシオンは「もしもの話」と言いアイザックを安心させ、出世するには実績が足りないと嘆く。
それに出世に関しても階級が関係していると、現実を突き付ける。
「……だな」
「だけど、安心した」
「何か、隠しているな」
「それについては……」
「言えないのか?」
「言える時期になったら、言うよ」
「そのような言い方をされると気になるが……無理に聞いても、お前は話してはくれないだろうな」
シオンの性格を熟知しているからこそ、アイザックは無理に聞き出そうとはしない。
またそのようなことをして友人関係を壊してしまった方が、アイザックにしてみれば損失が大きい。
アイザックは「話す決心がついた時に話してくれればいい」と言い、シオンとの友人を取る。
友人の心遣いと優しさに、シオンは何も言うことはできない。
ただ頭を垂れ感謝の気持ちを示すと、お礼とばかりにアイザックが検査を受けに行く時、同行してもいいという。


