『僕は声が出ない』


えっ…?

思わず、バッと青年の顔を見ると、苦笑いをしている。
そして、あたしは納得した。

ああ…。
あたしを無視してたんじゃなく、声が出なかったから、何も言わなかったんだ。


そう思うと、何だか胸の奥がざわついた。
罪悪感と動揺が駆け巡る。

あたし…ひどい態度とってしまった…。

ぎゅっと口を結び、俯いていると、青年が私の肩を叩いた。
顔を上げると、また紙に文字が書いてあった。

『ごめん…びっくりした?』

青年は私を心配そうにしながら、首を傾げる。
「そんなわけないじゃん。てか、何で謝るの?」
すると、青年は目を見開き、慌てふためき始めた。
その瞬間、胸の奥のざわつきが、一瞬にして消えた。
そして、新たなざわつきを感じた。

ああー…
こんなオドオドした男大嫌い。
見ててイライラする。

「…もういい。聞いたあたしがバカだった」
頭をかきながら、ため息をついた。
すると、青年はまた書き出し、紙を私の方へ向ける。

『ごめん…。で、体調悪いの?』

「は?」

『だって、保健室に来たから…』

………あっ。

あたしは眉を上げた。