「乗り過ごした…」
そういえば、今日は平日だ。学校に行くにしても終わったにしても、時間が合わない。
「どこで降りる予定だったの?」
彼の告げた駅は、私が乗った駅より四つも前の駅だった。
「はあ…」
「何か用事でもあったの?というか、キミ高校生でしょ。学校は?」
これじゃあまるで口うるさいオバサンだ。そう後悔したけれど、彼はさほど嫌な顔をしていなかった。
黒くて太い無造作な髪が、端正な顔立ちにマッチして、ようやく年相応の見た目になっている。
「ガッコさぼりたいときくらいあるよ」
拗ねたような開き直ったような悪戯な口ぶりだ。甘えた瞳がまだあどけない。
「まあ、そうだね」
「オネーサンもあった?学校さぼりたいとき」
「そりゃあね」
「そんときどうした?」
「さぼったよー、もちろん」
私がそう言うと、彼は途端にくるりと表情を変えた。仲間を見つけたとき特有の親しみを込めた笑みが、こちらに惜し気もなく向けられる。