のんびり電車に乗ってみるのも案外楽しいものだな。下り方面に乗ったのが久しぶりであるせいもあるだろうけど、目的がないことがこんなに気持ちのいいものだって忘れていた。

私もこの少年くらいの頃は、あてもなくふらふらしたり脈絡のない会話をしたり、目的がないことを目的としてよく過ごしていたものだ。

二年前に社会人になって以来、そんなことはめっきりなくなり、たまに同級生で大学生の知り合いに会う度に、自分がつまらない人間になっていってる気がした。



キーッ

突然、黒板を爪で引っ掻いたような音。急ブレーキがかかった。電車が前につんのめって止まる。

すると、少年は驚いて目を丸くして跳び起きた。電流でも流したのかってくらい身体が大袈裟に跳ね、寝起きの表情は無防備すぎる。