拝啓 お子様みたいな貴方へ
"お子様"という言い方をすると、すぐ怒りますよね? でも、手紙は最後まで読んでください。
貴方は、不器用でいじられキャラで、面白くてやることやることが小学生みたいで可愛らしい人だなぁと思ってました。先輩に対してこんな態度ですみません。
でも、私と先輩が放送担当の時、私ずっと咳き込んでたじゃないですか? そしたら先輩が急に、
"『急に放送で喋りたくなったから、俺がやる』"
って、言いましたよね? 正直その時は意味がわかりませんでしたが、今思うと、私を気遣ってのことだったんですね。例えそうじゃなくても、あの時はありがとうございました。その他にも、委員会の頼まれごとで重いものを持ってくれたり、私が忘れ物をしたときは、誰から聞いたのかわかりませんが、さりげなく貸してくれたりしましたよね?本当に感謝しきれないくらいに感謝しています。
でも、先輩が私にも優しいのはあの先輩によく見られたいからですよね?先輩達が噂になってるのはよくわかっています。だって、委員会の時も、普通の学校生活の中でだって、あの人に見せる顔は私に見せてくれるものとは比べ物にならないくらいに違います。
先輩は、分かりやすすぎますよ?(笑) もう少し、隠さないと駄目ですよ?幸せそうなのバレバレですよ?
私は、先輩に優しくされると嬉しい反面、辛くもなるんです。知ってました?知りませんよね?先輩ほど分かりやすくはないんで(笑)
先輩が私に笑いかけてくれるたび、私にだけ笑いかけてくれればいいのにとか、私だけを見ていてくれればいいのにとかそんなことばっかり考えちゃうんですよ。ずっと、ずぅーと黒い感情がグルグルしてるんです。貴方といるのが楽しいはずなのに、最近はずっと辛いんです。
だからこんな思い、自分勝手ですがもう、終わらせたいんです。
私は先輩のことが……___。
彼の下駄箱にこっそり入れたラブレター。最初はドキドキして、もしかしたらとか、期待もした。でも…
「私の恋は叶わないのに…バカみたい…。」
彼はあの人が好き、あの人も彼が好き。あの2人は、両思いなのだ。私は邪魔者。邪魔者な私は、叶わぬ恋に水をやり、叶わぬ恋に期待をした。今思えば、馬鹿馬鹿しい。でも、そんなこともわからないくらいに彼のことが"好き"だったのだ。その時、彼への思いが滴となり、私の両目からこぼれ落ちる。自分の意思では制御できないくらいたくさん…。お昼休みの放送に向かう途中なのに、涙は止まってはくれない。おそらくもう、先輩は放送室で私を待ってくれているだろう。私は一歩一歩、放送室に向かっていく。止まることのない涙を流しながら…。行きたくない、行きたくない、今先輩の顔を見たくない。今の私の顔を見られたくない。そんな感情で私の胸はいっぱいだ。
放送室の前につくと、ドアが開いていた。いつも通り、ドアノブに紐をつけ、固定をしている。放送室に先輩の姿はなく、安堵した私。恐る恐る部屋に入り、放送機器の前に座る…少し距離をあけ。未だに止まらない涙を、どう止めていいのかもわからない。とりあえず、ハンカチで両目を押さえ、深呼吸をする。少しリラックスをすることが出来たが、頭や胸の中は未だに先輩のことでいっぱいだ。まだ、整理はつかない。けど、放送することで、少しは落ち着けるだろう。


