真っ白の部屋に、真っ白なベッド。



真っ白な布団に、真っ白なシーツ。



そこに小さくうずくまる真っ白な少女がいた。



いつか、寒い秋の夜、タクシーの中から見た映像と重なった。



また、会えた。



「なこ……迎えに来たよ」

「………や」



怯えるように、小刻みに震える真っ白な彼女は最後に見た時より一回り小さい気がする。



出会った頃に戻ったみたいだ。



「なこ…もう大丈夫だから。一緒に帰ろう。な?」

「……ん……淳……」



少しずつ落ち着いてきたなこをそっと抱きしめる。



やっぱり小さくなってる……。



辛かったよな、寂しかったよな。



苦しかったと思う。



遅くなってごめん。



ドラマなんかじゃ、こんなに弱る前に颯爽と助けられるのに。



現実はそんなに簡単じゃなかった。



でも、それでもなこが今、この手の中にいることが嬉しくて。



泣けてしまいそうなくらいに安堵している俺。



「なこ、とりあえずココを出よう?」

「……怖いよ」

「大丈夫。外にケンさんがいるよ。雪ちゃんも真友子さんも待ってるんだ、なこの帰りを」

「……待ってる?」

「そう。みんななこが大事なんだ」



ゆっくりと閉じていた瞼を開けて。



徐々に顔を上げて、俺を見て。



そっと頷いた。



細いなこの肩を抱いて、来た道を戻る。



細く、体が弱り切っているらしいなこは、梯子を登るのも歩くのも辛そうだ。



こんなになるまで……本当謝っても謝りきれない。



誰が悪いとか、攻め立てることはできないけど、こうして目に見えてなこが弱っているのを見るとツライな。



もう、絶対にこの手を離さない。



もう、絶対に誰にも渡さない。



もう、絶対にこんなに弱らせたくない。



ずっとこの手で抱きしめていたい。