「よし、なこ?お話をしようか」

「………」

「おいで?」



無言で近づいてくるなこ。



胡座をかいた俺の足の上になこを乗せ、後ろから抱きしめる。



最近のお気に入りスタイル。



なこがすっぽりと収まる感じがイイ。



「今日、1個目の取材のとき、何かあったか?」

「………」

「言いたくねぇ?」

「………」



黙ったまま、首を横に振るなこ。



言いたくないわけではねぇんだな。



なら何で言わねぇ?



「ゆっくりでいいから。言ってみて?怒んねぇから。な?」

「………ん」



そっとなこを撫でる。



ポツリポツリ。



少しずつ、少しずつ。



話し始めたなこ。



「あのね、嫌だったの」



なこの心の内。



「淳が1人ってことは、なこが1人ってことでしょ?」

「え?」

「言ってた。1人寂しく…って」



あ。



取材のとき…言ったかも。



「なこ、1人は嫌なの。淳と一緒がイイ」

「うん」

「…でも、淳、好きな人、いるんでしょ?だから…」



好きな人…。



その話もしたような…してないような?



「恋って、好きな人ができることでしょ?テレビで言ってた。恋したら、他のものは要らないんだって」



テレビ?



あ、なこが見てる昼ドラ?



「淳が恋したら…なこ要らなくなる」

「なこ?」

「なこ、嫌なの。淳に要らないって…なこなんか要らないって言われるの」

「なこ…」



それで1日落ち込んでたわけか。



機嫌が悪かったわけでも、元気がなかったわけでもない。



怖かったんだ。



捨てられるかもしれない…そう思っちまったんだ。



「ごめんな?なこ…でも、俺はなこを捨てたりしない」

「…でも、淳、恋…」

「あれは…仕事だから。それにな?もし恋してても、なこを手放さない」

「…本当?」

「あぁ。何があってもなこはココに居てイイんだ。俺の側に居てイイんだ」

「…ん」



振り向き、ギュッと俺に抱きついてくるなこ。



なこをこんなにも不安にさせて…。



なこをこんなにも悲しませて…。



苦しませたのは俺なんだ。