「なこ?ケンさん顔は怖いけど、優しい人だから大丈夫だよ?」
「怖くないの…?」
「うん。俺のマネージャーで、いっつも一緒にいる俺が言うんだから間違いない」
俺のジャケットの裾をギュッと握ってるなこ。
なこの中で、葛藤してるみたいだ。
「…行く。淳、離れないでね」
「あぁ。ちゃんと一緒にいるよ」
コクっと頷くなこ。
行く決心がついたみてぇだな。
そうと決まれば出発。
なこの手を握って、家を出る。
「お待たせしました、ケンさん」
「お、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「そりゃ良かった…って、その娘、お前の服着てんじゃん」
やっぱりメンズってわかるよな…。
「なこ、服持ってないんすよ…買いに行く時間もなくて」
「今から買いに行くか?」
「でも時間…」
「社長に電話しとくわ〜適当に店入るぞ」
「あざっす」
うん、やっぱりケンさん優しい人。
車に乗り込んでも、手は繋いだまま。
離す気なんか更々ねぇから。
「なこ、洋服買いに行くぞ〜」
「服…?」
「そう。どんなのが好き?」
「…わかんない」
そっか…。
今まで、親に与えられた服着てたから。
自分で選ぶってこと、知らねぇのか。
「じゃあ、俺が選んでみようか?色々試してみて、なこに合ったものを探そうな?」
「…うん」
ゆっくり、本当のなこを探していこう。


