そしてやってきた誕生日当日。
なこと出会ってまる1年。
やっぱり開かれる盛大な宴。
デジャヴのような垂れ幕に、デカデカと書かれた祝いの文字。
違うのは、書かれた年齢。
それから会場の端の方にいる、愛する人。
去年ほどは多くねぇけど、やっぱり多少は関わりの少ねぇ人も来ている。
本当はこんな人ばかりのところストレスになるんだろうけど。
それでも当日会えねぇのは嫌で、連れてきてもらったなこ。
優さんにくっついて、壁際でモグモグと何か食べてる。
「「おめでとう‼︎かんぱーい‼︎」」
乾杯と共に始まった、誕生日パーティーという名の大宴会。
主役の俺よりも、周りが大いに盛り上がっている。
開始1時間も経てば、俺に挨拶に来るヤツも減ってきて…。
「なこ呼んできて?」
「オレはパシリじゃねぇぞ〜」
近くにいたケンさんに声をかけた。
わいわいガヤガヤ、皆んな自分の目の前の人と話すのでいっぱいいっぱいだ。
今なこを隣に座らせたところで、大丈夫だろう。
「じゅん!」
「なこ、来てくれてありがとな?」
「うん、おいしい」
なこの持つ皿の上には、優さんが取り分けたのだろうオードブルがたくさん乗っていた。
さすがに膝の上には乗せられるわけもなく、隣になこを座らせる。
「ジュンもいる?」
「んー、なこが残したら食べるよ」
どう見たってなこ1人で食べれる量じゃねーし。
「じゃああげる」
「ん。もういいのか?」
聞くと頷くなこ。
遠慮なく残りをもらい、朝からほとんど食ってない空きまくってる胃に流し込む。
「JUNさん!!」
「ん?あぁ、直哉か」
名前を呼ばれ、振り向くと歩いてくる直哉がいた。
遅れて来たらしい。
「仕事してたっす‼︎」
「お疲れー」
「あざッス‼︎ってか淳さん‼︎ヒドイじゃないっすか〜‼︎」
オレの前に来るなり、半泣きの直哉。
俺、何かした?
全然覚えてねぇわ…。
「この前俺置いていかれて、超大変だったんスよ‼︎」
「あ…なんか忘れてたと思ったんだよな」
「ショックっす…」
たしかに直哉忘れて帰った。
馴染みすぎて気付かなかったのは申し訳ないな。
「わりぃわりぃ。ほら、コレやるから」
そう言ってこっそり差し出したのは、さっき誰かからもらったテーマパークのチケット。
俺もなこも絶叫はムリ。
絶叫マシーンをウリにしてるそのテーマパークに行っても楽しめるわけがない。
貰ったものをあげるのは心が痛むが、こればっかりは致し方ない。
「え、イイんすか⁉︎」
「あぁ。期限ないらしいから、早く連れてってやれよ」
直哉には大切な人がいる。
その人を迎えに行くために最高に頑張ってる。
俺はそろそろ迎えに行ってやってもイイとは思うけど、直哉はまだまだ上を目指してて、俺はそれを応援したい。
「あざっす‼︎淳さんLoveっす‼︎最高の誕生日にしてください‼︎」
「あぁ、ありがと」
かわいいやつ。


