「なこ、明日俺、帰り遅くなりそうなんだけど…。1人で大丈夫か?」

「遅い…?」

「あぁ。撮影が大量に入ってんだ」

「…わかった。大丈夫」



不安ッス…。



でもまぁ、なこが大丈夫って言うから信じるしかねぇか。



「なこ、風呂は?」

「入ったよ」

「嘘だろ?」

「む」

「入ろうな?」

「ヤダ‼︎」

「こらっ‼︎待てなこ‼︎」



毎日繰り返される追いかけっこ。



結局は俺がなこを捕まえて終わるんだけど…。



「ヤダ〜淳嫌い〜」

「なこ‼︎無理やり入れるぞ‼︎」

「ふん‼︎やだやだやだ〜」



何でこんなに風呂を嫌う?



というか、何でお湯を嫌うんだ?



聞いてはいけないことのようで…。



それでもやっぱり気になって。



「なこ?お話をしようか」

「お話?うん‼︎」

「なこは、どうして風呂が嫌なんだ?」



世の中には知らない方がイイこともある。



なこの過去が、俺にとって知っておいてイイものか、知らない方がイイものか…。



よくわからない。



でも、一つだけ言えるのは…



なこを救いたい。



それだけだ。



小さくて、世間知らずで、たまに素直な…そんななこを、この手で闇から引き上げたい。