なこのデビューが決まった。
社長になこが仕事をしたいと思っていることを伝えてすぐに、初仕事が舞い込んだ。
話題になっているから、オファーが殺到しているらしい。
店のロゴや、商品のデザイン、挿絵、看板広告なんかまで…。
いきなり飛ばすとなこが疲れると判断した社長は、選りすぐって仕事を回してくれた。
有名アーティストのアルバムのジャケットだ。
そのアーティストは日本人ながら、海外でも人気を誇る超大物。
伝説のロックバンド・SSGだ。
ライブのチケットは毎回1秒でsold out。
幻のチケットと呼ばれ、オークションサイトでは100万以上の値がつくこともあるらしい。
そんなSSGがたまたま俺の写真集の絵を見て、直にオファーをくれた。
この絵を描いたのは誰だ⁉︎と事務所に連絡が来たらしい。
まだ顔も名前も出してないなこ。
顔出しはせず、nakoとしてうちの事務所所属のイラストレーターとして活動することになった。
俺の写真集はデビュー前だったから、このアルバムのジャケットがデビュー作になる。
SSGの仕事が初仕事になれば、なこの名前は全世界に発信されるだろう。
社長はどこまでもスゴイ男だ。
プレミア感を持たせ、時の人で終わらせるつもりはないらしい。
「じゃあ、nakoの打ち合わせは向こうに合わせていい?」
「SSGがこっちに合わせるのはムリじゃない?」
活動再開したばかりの俺はまだ調整がしやすい。
ゆくゆくはなこ1人で仕事をするだろうけど、初めは俺もついていくことにしている。
週に1.2日の仕事にセーブしてもらっているうちはついて行けそうだ。
「猫がデビューとは驚きだな」
「まぁ…」
「心配か」
そりゃ、ね。
高校に通っていればまだ2年生になったばかりの歳だ。
そんな歳から多くの人に見られるトコロで働いて、そんな大物と関わって…。
普通の女子高生でも不安になる状況。
そんなトコロにまだまだ知らないことの方が多いなこを放り込むのにはやっぱり抵抗がある。
「猫なら大丈夫だよ。社長もお前もいるんだ。案外猫らしく飄々とやってのけるんじゃねぇの?」
これって慰めてくれてる…⁇
まぁでもそうか。
守りゃいいんだよな。