アキと私〜茜色の約束〜


いつの間にこんなに大きくてごつごつした手になったんだろう。

がっしりした男性の手。


「は、離して…」


秋人は「あ…悪い」と手を離すと、その手で髪を掻き上げた。

一瞬見えた整った眉毛と額。
その仕草にさえもドキッと反応してしまう。

もう…何なのよ、今日の私。
秋人の声や仕草にこんなにもドキドキして…

これじゃまるで、私が秋人のこと好きみたいじゃん…

こんなのあり得ないんだから…


「初めてだな。茜が練習見に来てくれたの」

「別に見に来たわけじゃない…忘れ物取りに来ただけだし」

「それでも、嬉しいよ」


そう言って、秋人は手の甲で口元を隠し、視線を逸らした。

あ…笑った…?

あの事故以来、笑った秋人を見た覚えがない。

ううん。
もっと言えば、秋人がぐれたあの頃から、秋人は笑わなくなった。