アキと私〜茜色の約束〜


お母さん曰く、不動産屋と交渉中でまだ売りには出ていないようだ。

アキはいないってわかってるのに、この二年で自分の部屋の窓からアキの部屋の窓を、毎日朝夕と見るのが癖になった。

もしかしたら電気がついているんじゃないか。

突然、ただいまって帰ってくるんじゃないか。

そんなことあり得ないのに。
想像しては孤独感に苛まれて涙を流す日々。


「おばさんは元気にーーっ、すみません」


自分の無神経な言葉にはっとして口を噤む。

元気にしてるわけがないじゃない。
おばさんもおじさんも、事故の日から笑顔を失ってしまった。

誰よりも辛くて、毎晩涙を流しているのはアキの両親である二人なんだから。


「秋人君、インターハイ出場を決めたんだってね」


おじさんはやや気まずい雰囲気を気に留めてないような穏やかな声色で話題を変えてくれる。