どれだけ泣いても、涙は枯れることを知らない。
込み上げてくるものを飲み込むと、おじさんは、「少し時間あるかな?」と眉を寄せた。
深刻そうな表情のおじさんに、嫌な予感が頭を過って心臓がドクッと重苦しく音を立てた。
アキの病室の前にある長椅子に、並んで腰を下ろす。
やや薄暗く湿っぽい廊下のせいか、気分が沈む。
「ミルクティーで良かったかな?」
「はい。ありがとうございます」
おじさんから缶を受け取ると、冷たいミルクティーを流し込んだ。
身体中が冷んやりとして、いくらか緊張が解れる。
「お父さんとお母さんは元気?」
「はい。おじさんやおばさんに会えなくて寂しがってます」
不動産屋が来たあの日から割とすぐ、おじさん達は隣町に引っ越した。
真向かいのアキの家は今は空き家で、主がいないそこは寂しい雰囲気を漂わせている。

