少し言いすぎたかもしれない。
確かに嫌いだけど、あんな風に言うべきじゃなかった。

今更後の祭りだけど、自己嫌悪に陥って秋人から目を逸らす。

少しの沈黙が、重い。
ややして先に口を開いたのは秋人だった。


「来週の土曜日、インターハイ予選の決勝なんだ」

「え…?」

「…俺…茜に見に来てほしい」


いつになく消え入りそうな弱々しい秋人の声。

昔の秋人は自信家で、はっきり物事を言うタイプだった。
こんな弱い秋人、私は一度しか見たことがない。


「…なんで、私が」

「アキと約束したから」

「え?」


秋人がボソッと呟いた言葉をうまく聞き取れなくて、反射的に聞き返す。


「絶対見に来いよ。約束、だからな」


秋人は私の返答も聞かず、勝手に約束を取り付けて屋上から出て行った。

一時間目開始のチャイムが鳴り始めても
、そこから動けず、閉まったドアをただ見つめた。