突拍子もない話に、首を傾げる。
秋人は、ああ、と頷くと、遥か遠くの空を見つめるような遠い目をして続けた。
「もう遠慮はしない。茜は俺が貰う。だから、嫌なら早く目を覚ませよってさ」
はっきりと意思がこもった声の秋人に、再び胸が跳ね上がった。
「事故の前、アキと話したんだ。茜に二人で金メダルを掛けてやろうって。茜はきっと応援席の一番前のど真中で、周りを気にせずに、誰よりも大きな声で応援してくれるはずだから。そんなお姫様に恩返しをしようって」
アキが、そんなことを…?
あの日のアキの最後の笑顔を思い出す。
夕陽と同じぐらい紅く染まった顔で、優しい飛びっきりの笑顔を見せたアキ。
あの後、アキがそんなことを秋人に言っていたなんて知らなかった。
アキの気持ちが嬉しくて、心が苦しい…

