「―買いかぶらないでくれ。よい王になりたいと、努力してきただけなのだから」

ラミアードの響きのよい声で、カイは追憶から引き戻された。

―王、王、とラミアードはそればっかりだ。

カイはまたある日のラミアードを思い出す。

けがをした野兎を助けたのに、ラミアードはこう言ったのだ。

『王は心優しくなくてはならないから、やっているだけだよ』

それはカイにとって腑に落ちない台詞だった。

『うそだよ。ラミアードは優しいラミアードだから、やっているだけでしょう? 王なんて関係ないよ』

『王が関係ない? ばかを言わないで。王が関係なければ、私は、私は…』

あの時の青ざめたラミアードの姿と、今優しく微笑んでいるラミアードの姿が、なぜか重なる。

あの頃と変わらず王にこだわりすぎているように見えるラミアードの生き方は、カイにはどうしても窮屈に思えて仕方がないのだった。