聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~

やがてリュティアたちの視界にひときわ広大な、まっさらにならされた正方形の土の大地が見えてきた。

周囲をスノードロップの花畑に囲まれたそこは、白い海に浮かぶ黒くて四角い小島のようにも見える。

ここが、今日リュティア達が手伝う農場だ。

「じょおうさま!」

「リュティアさまっあそぼうっ」

農場に着くなり、顔なじみになった子供たちがわらわらと寄ってきた。

母親たちがにこにことその様子を見守っている。ここでは女も子供も関係なく、皆で力を合わせて働くのだ。

そうでなければ魔月たちに荒らされ作物は枯れ血肉が腐臭を放ち見る影もなかったこの農場を、ここまで回復させることはできなかっただろう。

以前ここでは様々な作物を植えていた。

じゃがいも、なす、トマト、ピーマン、白菜、人参、かぼちゃなどが、見事なまでに整然と植えられ手入れされ、一幅の絵画のような美しい光景を誇っていた。

以前のような、いやそれ以上の農場にしたい、それが皆の願いであり、何度か手伝いに来ているリュティアの願いでもあった。

この日リュティア達は民と一緒になって畑を耕し、額に汗して肥料をまいた。

土質改善のために炭をまくという責任者の話にも熱心に耳を傾けた。

パールはとびだしてきたミミズを子供たちと一緒につまんだり、泥団子をつくって架空の店をつくったりと、始終はしゃいでいた。アクスは力仕事のほか、昼に供されるスープづくりに忙しそうだった。

「ずいぶん楽しそうだな」

アクスが手を止めパールを茶化すと、

「それなりにたしなんでるだけだよ。そんなに子供じゃないからね」

とつんと胸をそらすパールだが、頬にも額にも泥をつけて泥団子を大事そうに並べている様子は、どこからどう見ても子供だった。それはリュティアとカイの微笑みを誘った。