しかし、翌日も、朝議が終わった後、女王はフリードに声を掛けてきた。そして同じことを頼んだ。フリードは女王が諦めなかったことを意外に思いながらもすげなく断った。

そんなことが毎日続いた。

女王がここまでしつこいとは思わなかった。それに少しうんざりしながらも、フリードはだんだん面白くなってきた。どこまで食い下がる気なのか見物だと思ったのだ。

そんな日が15日ほども続いたある夜、フリードが主宮殿での仕事を終えて夜、宰相邸に帰ると…

門の前に人影があった。

常春の国と言えど、冬の夜はやはり少々冷える。

人影は手をこすりあわせながら、所在無げにぽつんと立ち尽くしていた。その人物の髪の色に気付いた時、フリードは目を剥いた。

「女王陛下…!?」

さすがのフリードもこれには慌て、大わらわでとりあえず女王を屋敷の中に通し、毛布やら温かい飲み物やらで体を温めさせた。

「何を考えておいでです」

問うフリードの声は驚きと困惑で早口だった。

フリードの私室のソファで毛布にくるまった女王は、ガラスのテーブルを挟んで向かい合うフリードに真摯なまなざしを向けた。

「どうしても、お願いしたかったのです」

「教師の件ですか」

「そうです」

フリードは天を仰いでため息をついた。