「作農地の被害状況の確認が終わりました。荒れてはいますが、土は大方無事です。きちんと手入れをすれば来年には収穫が見込めるでしょう。今試験的にじゃがいもを植えています。質の良いものがとれるかどうか経過を見ていきます」

「それなのですが、プリラヴィツェが来年の収穫までの間の食糧援助を申し出て来ています。世界に昼を取り戻した奇跡の王国の噂を聞きつけて、恩を売っておこうとの算段でしょう。あまり恩を売れば政治的介入も考えられますが、いかがいたしましょう? 陛下」

このように、彼らは突然話をリュティアに振ってくる。話についていくのだけで一生懸命なリュティアはその度にまごつく。

「そうですね………」

「今は政治的介入を云々言っている場合ではありますまい。それを言うならすでに我が国はヴァルラムの属国となってもおかしくないほど恩を受けているのだから。ここはプリラヴィツェの援助、お受けになった方がよろしいかと。それでよろしいですね? 陛下」

いつもこのように高圧的なまでの態度でリュティアに相槌を求めてくるのは、28歳の若き宰相フリード卿だ。

自分などよりよほど豊富な経験と知識を併せ持つ彼にそう迫られれば、リュティアは頷くよりほかない。

「はい………」

朝議はいつもこの調子で進んでいく。話は次に進み、新生フローテュリアの誕生にあたって増築される棟について意見が交錯する。

「以前の建築法にのっとると、この規模のものが妥当だと思われますが、どうでしょうか、陛下」

「はい、建築法、ですね…ええと…」

その法律については昨夜遅くまで必死になって勉強したからだいたいのことはわかる。だが突然話を振られたのでとまどい言い淀んでしまったのを、フリード卿が冷たい目で見おろした。

「建築法をご存じない?」

「いえ、その…」

ふう、と小さくため息をつかれ、リュティアの心にまた新しい傷がつく。こういう時違う、知っていると強く言えないのがリュティアの性格だった。