「……あなたは………カイ………? 私………」

―生きている。

―リュティアは生きている…!!!

その瞬間カイはリュティアの体を、生まれて初めて力いっぱい抱き締めていた。

カイはリュティアの体がこんなにやわらかいことを初めて知った。

リュティアの体からこんなに甘いいい匂いがすることを初めて知った。

―だって、リューは女王になる人だ。

たとえ女王でも。

―だって、リューはあいつのことが好きだ。

たとえ他の人を好きでも!

そんなことより、大切にしなければならないものがある。二人のこの命、出会えたこと、今共にいること、すべてが奇跡なのだ。本当に大切なことなのだ。それを知った、感じた、理解ったのだ。

だからカイは、愛しいリュティアの髪に顔をうずめながら囁いた。


「リュー、愛している。ずっと、ずっと前からお前を、お前だけを愛している。たとえこの想いが許されないものでも、…それでも構わない。愛しているんだ」

リュティアの瞳が驚きに見開かれる。


カイはこの時気付かずにいた。

黒い雪に触れたせいで心の奥の記憶のカギが外れかかっていることに。それがカイの大切に思うすべてを揺るがす記憶であることに、気付かずにいたのだった。