純白の扉の前で、ファラーガが目を細める。

「…まただ。ここがこんなに美しい想いの花畑になったのは、いつ以来なのだろうな…素晴らしいものを見せてくれたカイ、君に、ささやかな礼をしよう…」



カイの目に出口が見えてきた。入ってきた時と同じ光の渦だ。

砂時計がまさにすべて落ち切ろうとしている。

間に合うか!?

リュティアを抱いたカイとセラフィムは全速力でそこに飛び込む。

飛び込んだ瞬間――

カイは不思議な体験をした。



闇を裂いて、一筋の光が目を射る。それは広大な海から今まさに昇りくる、太陽の光だ。

きらきらと宝石のように波を輝かせ、山々の影を浮き彫りにし、世界というものすべてを愛おしむように照らしだしていく。

しだいに強くなる黎明の光が世界に鮮やかな濃淡を描き出す。闇色から黄金へ、そして茜色へ。

長い夜は終わった。神話を歌う星々は光にかすんで消え、月がひとひらの花びらのように空に白く残るのみだ。

この世界のどこかで、産声があがる。生き物たちが次々と目覚める。

―はじまるのだ。

世界は奏で始める。喜びの詩を。

そしてこの世界のどこかで二人は出会う。目が合い、ぎこちなく言葉をかわす。互いの名を名乗る。

愛が始まったのだ。

喜びがあふれる。太陽の光のように明るく輝く。

世界は大いなる喜びで満たされる。

春が訪れ冬を迎え、季節は巡りゆく。二人は笑い、泣き、怒り、また笑う。肩を並べて歩く。

そして…。