「リュー!!」

なりふりかまわずカイは叫び、がむしゃらに駆けた。

頬に、腕に、触れる光る雪が次々とリュティアの想いを伝えてくる。

カイは知りたくなかったことを知った。

リュティアと星麗の騎士がパールの異空間で再会していたこと。

その時彼はライトファルスと名を名乗って去っていったこと。

彼がリュティアの敵魔月王猛き竜(グラン・ヴァイツ)であったこと。

それなのにリュティアがどんな想いで彼を大切にしていたか。

深碧の湖で、なぜか二人の間に流れた優しい空気。リュティアの渾身の告白。そして、繰り出される銀の剣―――…

リュティアの深い悲しみの感情に、カイまで泣きたくなったその時、カイの胸にひらめくものがあった。

「待てよ……」

そういえばなぜ、雪に触れると自分の記憶だけでなく、リュティアの想いがわかるのだろう。この雪は、なんなのだろう。

ファラーガは、ここがリュティアの心の世界だと言った。リュティアの心の世界…心の景色…何かつかめそうだ。

雪が伝えるリュティアの気持ち…ここでリュティアに一番近いもの…ここにあたりまえにあるもの? 心を形作っているもの…雪…リュティアの悲しみのように冷たい雪…

―雪…。雪…?

まさか、とカイは愕然となった。

まさか…いやだがここは心の世界なのだから、ありうる…それなら、リュティアの気配がこんなにも近いことも頷ける。

「雪が、リューなのか…? 雪そのものが、リューなのか!? リュー!?」

カイが雪をすくって呼びかけると、世界が唐突に塗り替わった。それは水の中に絵の具をたらしたような鮮やかな変化だった。

降る雪が弾けるように消えた。地面からもすべての雪が消え、かわりに荒涼とした大地となった。

そして。

そしてカイの目の前に、探し続けた人が現れた。

リュティアは荒涼としたむき出しの土の大地にはだしで立っていた。その顔は白い両掌で覆われ、細い肩は震えていた。

「リュー!!」