ラミアードとカイの二人は、しばしアヌスを前に言葉をなくして立ち尽くした。

「この剣が……王の宝だと………?」

やがてラミアードが茫然と呟いた。その唇からは見るからに血の気が引いている。カイは急いで言葉を探した。

「何かの間違いです。きっと王の宝は別に――」

「いや、カイ、これが王の宝だ。なるほどもとより王族にしか持てない摩訶不思議な剣ならば、真実の王を決める不思議な力まで備わっていてもおかしくはない。カイ、剣をとれ」

「…いやです! 絶対にいやです!」

「ではまず私が持とう。私は…自分を信じている」

ラミアードの声は堅く、そのまなざしは険しい。

―真実の王はラミアードであってほしい。

カイは心の中でそう念じながら、ラミアードがゆっくりと宝剣アヌスに手を伸ばすのをみつめていた。

ラミアードの手が宝剣アヌスの柄に触れる――その瞬間!

ばちっと電撃のようなものが走り、ラミアードの手は激しく弾かれた。

カイは目の前の光景を、信じたくなかった。

信じたくなかったが、それは事実だった。動かしがたい現実だった。

“王の宝”は、ラミアードを拒絶したのだ。

ラミアードが弾かれた手を拳にしてきつくきつく握りしめながら言った。

「真実の王は………私ではなかった………」

その声にはたとえようもないほどの嘆きの響きがあった。