二人の周囲にそそり立つ土壁にはどれも緻密な彫刻が施されており、中には動物や人間の壁画が描かれたものもあった。記された文字が古代文字であることから、これらが相当古い時代の建造物であることが知れた。

「おそらくここは巨大な神殿だったのだろう。神を敬う暮らしに関する記述が多い」

ラミアードがさらりと言うので、カイは度肝を抜かれた。

「殿下、この文字を読めるのですか?」

「だいたいはな。考古学も王には必要と感じたから教師を頼んだことがある」

―ラミアードが王にふさわしいかどうかはわからない、だが誰よりも王になるため努力してきたのはきっとこの人だろうとカイは思った。

カイはリュティアのことを抜きにしても、心からラミアードが真実の王として認められれば良いと思った。それが何よりも王国のため、人々のためになると感じたのだ。

だが………

ほどなくして、巨大な神殿の遺跡の中央に、二人は祭壇をみつけた。そしてそこに捧げられたあるものをみつけてしまった。

そこには一振りの美しい剣があった。

黄金の鞘に、咲き誇る花々の意匠の銀の浮彫。光神が両腕を広げる様を表した柄の中央に輝く見事なエメラルド。

カイはうろたえ絶句した。その剣があまりにも目に馴染んだものだったからだ。幾度となくそれを構えて魔月に立ち向かったことのある、体に馴染んだものだったからだ。

そうそれは、紛れもなく宝剣アヌスであった。消えたはずの宝剣アヌスであったのだ。