「拓斗」
私とほぼ同時に振り返った高橋幸満が声の主の名をポツリと呟く。
するとそれが聞こえたのか、拓斗は私達に近付くと「何してんの?」なんて聞いてきた。
坊主頭にエナメルバック。焼けた肌。
見るからにスポーツマンなこの男は身長も高く、見上げる際よく首が痛くなった。
「何って……ちょっと八重に用があって、話し掛けてた」
「ユキって転校してきた時から高橋にちょっかい出してるよな~。やめとけよ。高橋八重って女はな、顔は可愛いかもしれないけど、中身は可愛げのかの字もないって有名だから」
「大きなお世話よ」
こんにゃろう。肩をおもいっきりグーパンチしてやったけど、この筋肉バカにはきかない。
野球で鍛え上げた拓斗の肩はとても硬く、逆にこっちの手が痛くなった。
ムスッと口を尖らせると、拓斗は意地悪くケケケと笑う。
新東拓斗(しんどうたくと)は美香同様、幼馴染みで、私の数少ない友達だった。
