「でも、俺は八重って呼ぶ!」
……こいつは人の話を聞いてるのか。それとも聞いた上でのこの反応なのか。
天然っていうよりもバカだと思う。
むしろ私をバカにしてんのかって態度に苛立ちが募った。
「呼ぶなって言ってるでしょ?いい加減にしてよ」
「八…」
「煩い。大体なんなの?流星の丘で会った時も、約束を果たしにきたなんて。私、あんたと会ったのあの時が初めてじゃん」
「それは…」
「それに!」
苦笑しながら何か言いかける高橋幸満にその隙を与えない。
空気が淀んでいくような気まずさに気付いてはいたが、止まらなかった。
「私、約束って言葉、この世で一番嫌いだから」
だからそんなのする訳ないじゃん―――…。そう言った途端、常に笑顔だった高橋幸満の表情が強張った。
眉を下げ、瞳を悲しそうに揺らがせる彼に困惑する。だってそんな顔をされる意味が分からない。
咄嗟に謝りそうになったけど、なんで謝るのかも分からずただ呆然としていると、「高橋!ユキ!」と。私達を呼ぶ声に振り返った。
