うちの高校は時間厳守を常に心掛ける為にと、授業のはじまりも終わりもチャイムが鳴らない。

その為休み時間の終わりは自ら時計を確認するのだが、この学校に来たばかりの男はまだそれに慣れてないみたいで。

「チャイム鳴らねぇなんて不便だな~」なんてぶつくさ言いながら、窓際前から2番目の自身の席に戻っていった。おい、奪った本持ってくな。返しやがれ。


「モテモテだね~高橋」


苛立つ男の背中をボーッと見ていると、隣の席に座っている坂口美香が話し掛けてきた。

私の席は廊下側の一番後ろの席。隣の席との距離もさほど遠くない。

だから先生が教室に入ってきても、小声で会話する分にはバレる事はなかった。