「な……」


ひょこっと。本当にそんな効果音が聞こえるくらい木の陰からひょっこりと顔を出したのは、見知らぬ少年だった。

少年っていうか、まぁ年は私と同じくらいであろう男が、ニコッと爽やかに笑いながらこちらに近付いてくる。


「な……ななな、な…!」

「な?」

「何!?何あんた!?」


いったい何時から居たわけ!?
続けて紡ごうとした言葉は人一人分の距離を開けて立ち止まり、正面から私を見つめてくる男に聞くタイミングを逃す。

あまりにもじっと見つめてくるもんだから知り合いかと思ったけど、こんな整った顔立ちをしてる男に出会ったのは初めてで。

なのに男は、まるで何かを懐かしむように目元を緩め私を見てるから、違和感しか感じなかった。


「……何?」


主語も述語もあったもんじゃない。ただただ疑問の単語を発し、片足を一歩後ろに下げる。眉間にぐっと皺が寄ったのも自覚してる。


「何って……」


しかし男は警戒心を露にする私とは反対に余裕綽々とした態度で口を開くと、両手をポケットに突っ込んで柔らかに微笑んだ。



「約束を、果たしにきた」





――――この時の彼の言葉を、笑顔を。

私は今も、覚えてる。