最後の龍の華②

緊急事態と言っていた母様のあの顔がなんだか、具体的ではないけれど初めて見る顔だから、あんな切迫つまった態度も見たことがなかった。



でも、ここには父様がいるし
なんだって龍族だもん!誇りをかけてみんなを守るのが龍族なんだから!
大丈夫、大丈夫!





って真っ暗な空間でずっと言い聞かせてた。
気づいたら、雨音も聞こえなくなっていて、時間はよくわかんなかったけど、夜になったんだなーって変に確信していて。



でもなんだか、妙に静かだな。って思って
さっきの母様の言いつけを覚えていなくて母様を探しに行こうと思った。





あの時の気持ちは今思っても不思議な感覚だった。
外も見ていないのに夜になったと確信したり母の言いつけを破ってまで外に出て行く勇気。





でも、コレだけは言える。
本能だったと。









〈父様?母様?〉




屋敷中がやけに静かで...
コツコツと響く自分の足音がやけに大きく聞こえて、いつも気にしないのにそれだけやけに耳に残っていて。





長の部屋にたどり着いた時は、もうすぐ会えると思って、安心したの。






〈父様?いるの?〉






扉を開けて、中を覗いたけど真っ暗で見えなくて...
中に入って歩いていると、コツって何かにあたったの。
視線を下にむけて、ぶつかったものを確認した。



〈えっ、なにこれ〉




月光にあたって、妙にゆらゆらとしている剣が落ちていてその剣先にはこびり付いた朱。





目線をすこし上に向けると、真っ黒な塊があって。
自分の予想した人物じゃないように祈ってた。






ちがう。ちがう。ちがう。ちがう。
だって、父様は最強だって言ったじゃない。母様も待っていてって言ったじゃない。
だから、違うの!!!









でも、一歩ずつゆっくりと近づく度に言い聞かせるのも苦になって
近づく度に、これは私の大切な人達であることにだんだんと気づいていって。






〈やだ。やだ。やだよ〉






父様は母様を守るように覆いかぶさっていて。






〈起きてよー!父様!母様!!!〉






どんなに揺さぶっても起きない二人に今まで堪えていた、涙が決壊した。