『あきら・・・・・』


沙織のその一言で俺は全てを思い出した。
明は俺の兄。二年前に飛び降りで死んだ。

・・・ことになっている。
しかし事実は逆だ。死んだのは智。
俺の名前は明。
俺達は妻の沙織も見分けがつかないくらい似ている双子だった。

俺も智も沙織が好きだった。
でも沙織と結ばれたのは俺ではなく智だった。
悔しかった。だからすり変わることにした。

『記憶喪失』してしまった理由が分かった気がした。事実から逃げたかったのかもしれない。智を突き落とした事実から。

・・・しかし思い出せて良かった。

彼女達に話そう。智がそのきっかけをくれたのかもしれない。いや、これは罰なのだろうか・・・。