夏祭りの夜に、あたしは振られた。

夜空にキラキラと輝く、光る花たちの下で。

「…そっか」

普通は、大多数普遍的には、

夏祭りなんて、お金があまりない学生カップルにはうってつけのデートスポットなんだろうな、なんて思ってみたり。

じゃああたしは、普遍的じゃなかったってことだ。

誰もいない、薄暗い、ちょっとした山みたいなところにある神社の、お賽銭箱の前で。

ドン、とひとつ花火がちりばめ

あたしと相手の男の頭に灰がハラハラと降りかかった。

ああ、きっとこんな夜に呼び出したのは、顔を見られたくないからだろうな。

それともあたしの顔を見たくないからか。

風がぬるくて気持ち悪い。

遠くで盆踊りの音楽が聴こえる。

早くに生まれたのか、ヒグラシが悲しげに鳴いていた。

夏が、始まろうとしていた。