あたしたち、付き合ってないんだよね。
どうして?
両想いなのに、どうして付き合わないの?
相変わらず足を止めない後ろ姿に、小さく問いかけた。
あたしは、巳波にとっての何なんだろ。
友達?
恋人?
好きな人?
都合のいい女?
ただの先輩?
友達のお姉ちゃん?
どんな風に思われてるのかな。
少しでも、巳波の特別な人になれる確率はあるって信じていいんだよね?
巳波を信じていいんだよね?
「今日、ちゃんとメールしてね」
別れ際に伝えた。
メールしてよね、巳波。
あたし、待ってるからね。
「うん。
じゃあね」
その言葉が、
その後ろ姿が、
寂しいよ。
切ないよ。
「バイバイ」
思わず大きくなったあたしの声。
『バイバイ』でも、
何でもいいから、言わなきゃいけない気がした。
声をかけなかったら、
もっと巳波が離れて行っちゃう気がして怖かったんだ。
今にも巳波の元へ駆け寄りそうになるあたし。
そんな中、離れていく巳波は、何も言わずに背中を向けたまま手を振った。
梅雨時の空。
気付けば雨も雷も、綺麗に収まった夕暮れ。
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