──ﾄﾝﾄﾝ─
そんな時だったの。
階段を下りる、誰かの足音が聞こえたのは。
音のするほうへ視線をずらすと、目が合った。
笑って手を振ると、巳波も笑顔を向けてくれたよね。
期待して、良かったよ。
「ねぇ寂しぃ〜。
みーんな帰っちゃったんだよ〜！」
校門の方へ歩き出す巳波に、話しかけながら後を付いて歩く。
「もう帰っちゃうの？」
１つ上の段差を歩く巳波は、
いつもなら小さいのに、
段差のせいであたしより目線が上にあった。
「うん」
あたしの質問に、目を合わせないで答える。
少しくらい、立ち止まって話してくれたっていいのに。
「雷鳴ってるから、１人ヤダぁ」
ほんのわずかでいいから、足を止めてほしかったのに。
「未来は？
一緒に帰ればいいじゃん」
なんも分かってないんだからっ。
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