驚いたのは、遠巻きに見ていた穆や進藤である。

「あんなん飲んで、大丈夫なんかいな?!」

まりあは、

「ちょっと小細工してあってさ」

と言うと、舌を小さく出しながら、いたずらっぽく笑ってみせた。

「実はね」

人質四人、犯人、予備二つの七つコップがある中で、ど真ん中のジュースは睡眠薬なしを一つだけ最初から置いておいた…というようなことをまりあは説明した。

「お盆が丸いでしょ?」

そういうときにはこうして並べて、と図を描くと、上から見て家紋の七曜星のような並びになる。

「ど真ん中に睡眠薬なしを置いとけば間違えないし、犯人だってまさか、それがただのジュースとは思わないでしょ?」

伊達に本ばっかり読んでる訳じゃない、とまりあは昂然と言った。

「確かにコーヒー出したあとは本ばっかり読んどったけど、そういうことか」

書庫の資料や推理小説をよく読んでいた理由が、穆は今ごろ分かったらしい。

「だってミナミのシャーロックが穆さんなら、あたしはワトソンにならなきゃならないんだよ?」

これには穆も参ったという顔をし、

「ワトソン以上かも知れんな」

とだけ言うと、苦笑いしながら頬を掻いた。