意外に機は早く訪れた。

差し入れから三十分ばかりした辺りで、

「喉がつまってる婆さんがあるから、飲み物をよこせ」

という要求があった。

人数分のオレンジジュースに予備を二つ、アウトドア用のプラスチックのコップに注いで、食糧と同じようにまりあが夜間金庫の入り口に置いた。

が。

ここで小さな異変が起きた。

「毒がないか、確かめたいから飲んで見せろ」

とまりあに言ってきたのである。

すると。

「じゃあ一つだけ」

とまりあは、ど真ん中のコップを取ると、喉を鳴らしてうまそうに浴びるように一気に、飲んで見せたのである。

これにはインターホン越しに犯人も気圧されたらしく、

「分かった、置いて行け」

と指示に従って戻ってきた。