【完】『道頓堀ディテクティブ』


肝が据わるとまりあは早い。

渡された食糧を手早く包むと、ゴスロリ姿のまま包囲線から銀行の夜間金庫の入り口に立ち、

「約束通り、食糧を渡しに来ました」

と鉄の扉にあるインターホンに呼ばわった。

犯人は姿を見たらしく、

「扉の前に置いて立ち去れ」

とインターホン越しに指示を出した。

まりあは指示に従って戻って来ると、

「…アクセントが変な若い女です」

とのみ言った。

「あれは関西弁でも東京のアクセントでもない」

たどたどしいから外国人ではないか、というような旨のことを言った。

「外国人、か…」

進藤は呟いた。

「手荒なことをする可能性がありますね」

集中力があったからか、穆は冷静さを忘れてはいなかった。

「こうなったら、昏睡作戦しかないでしょ」

まりあがボソッと言った。

「昏睡作戦?」

進藤が訊いた。

「食糧を要求したってことは、飲み物を要求してくる可能性があるってことですよね、穆さん」

「それは」

前にそういう話は、聞いたことがある。

「でもあれは物語の話で…だいいち睡眠薬をどう入手するんや」

「それは医師を呼べば何とかなります」

進藤が応じた。

「こういった事件では救護班がいます。警察の指示で医師が処方をすれば法律的には問題ありません」

「なるほど」

「まりあちゃんの作戦、使わせてもらいますよ」

そうやって。

進藤は弁当を手配しようとした。

が。

苦味が隠れない。

「うーん」

「…オレンジジュースなら気持ち苦くても、分からんはずや」

穆のひらめきで、オレンジジュースに微量の睡眠薬が混ぜられた。

一口舐めてみると、

「これなら分からないですね」

進藤の評価が出た。

「要求が来てから出す」

という手はずを整え、それが来るのを待った。