【完】『道頓堀ディテクティブ』

ベッド周りの衣類やら寝具が片付いて、大二郎はベッドの下地板を持ち上げた。

すると。

「…わっ!」

なんやこれ…大二郎は奇声を放った。

背中合わせにビデオテープを片付けていた穆が振り向いた。

「これみんな…アダルトビデオやで」

見ると整然と女体のパッケージが並んでおり、

「さながら最後の審判やな」

穆が思わず口にした「最後の審判」とはちなみにミケランジェロの絵で、穆もずいぶん以前だが北山の植物園の隣にある、名画の庭という博覧会の跡地の広場で陶板画のレプリカだが見たことがある。

裸体が並んでいるのを見立てたのであろう。

大二郎が片付けようとした。

「…ちょっと待った!」

穆が叫んだ。

「そんな藪から棒に…どないしたんですか?」

「もしかしたらこの中に、有馬ゆりあがいるかも知れん」

さしもの大二郎もあきれた。

「…そんなアホな」

「いいから、つべこべ言わんと調べるで」

こういうときには探し方があるらしく、

「右上からゼットの字を書くように探すんや」

との由である。

ほどなく。

「…いました!」

大二郎が大声を張り上げた。

「…ホンマや」

首もとのほくろと、左のほほのえくぼの位置が、ピッタリ一致している。

「いくらなんでもここまで一致はせぇへんですよね?」

「鈴井あゆな、か…」

どうやらこれが芸名であるらしかった。