数日を経た頃、
「ちょっと銀行まで行ってきます」
茉莉江が本町署を出たのは、霧雨のそぼ降る昼前である。
折から蒸し暑い日で、
「長袖なんかにするんじゃなかった」
と独り言でグチグチ言いながら、堺筋本町の銀行まで傘を手に歩いて向かった。
その頃。
穆とまりあは高麗橋の三越の地下街で、少し早めの弁当を使っていた。
京都にロケに来ていた、まりあの姉のゆりあこと鈴井あゆなに久々に面会しての帰路で、
「お姉ちゃん、ちょっと痩せたかも」
「そら芸能界っちゅうのは甘いもんやないからなあ」
などと世間話をしながら、幕の内をムハムハと食べている。
そこに。
穆の電話が鳴った。
出た。
「もしもし久保谷さん、進藤です」
「おぅ」
この頃には進藤補佐官ともすっかり気心の知れた付き合いになっている。
「例の犯人でも捕まったか」
「それが…花島さんが」
「なんぞ、あったか」
「戻らないんです」
「仕事ちゃうんかい?」
「銀行に行くって出て、それっきりでして」
「うーん、待ったらどうや」
「いや、それが…今しがた堺筋本町の銀行で、強盗事件が発生って通報があって」
出張らなければならないらしい。
「はよ行き!」
「じゃ、そういうことで」
慌ただしく電話は切れた。
「なんかあったんですかね?」
「強盗事件やっちゅうから、剥いた話が人手が足らんのとちゃうか」
穆にはそんな軽い認識であったらしかった。



