【完】『道頓堀ディテクティブ』


捜査本部にアドバイザーとして穆が加わることが決まったのは数日後の夕方で、

「ついにミナミのシャーロックが出陣」

というので、いつもの裏路地は報道機関のカメラマンやら記者やらリポーターやらで、てんやわんやの人だかりとなった。

が。

当の穆は冷静なもので、

「ふーん」

と一瞥したきり、答える必要はないと言わんばかりの顔をしてタクシーを拾うと、車中の人となった。

(そんなんで捕まるほど世の中、甘いもんやない)

そういうもんやろ、とだけ小声で窓を見ながらつぶやいた。

着いた先は捜査本部が置かれてある本町署で、

「私が補佐担当官の進藤英俊です」

と、名乗った警察官に案内されて廊下を歩いていると、

「…あ」

スーツ姿の花島茉莉江と出くわした。

「ご無沙汰しております」

やわらかい船場言葉の調子で穆が挨拶をすると、

「何の容疑?」

茉莉江らしい、ジョークにもならないことを言った。

「花島巡査部長、こちらは…」

遮るように、

「アドバイザーでしょ?」

何で探偵なんかに頼むんだか、と茉莉江は不愉快さを隠さなかった。

「まぁ不快なのは分かりますよ。自分が警察官なら、やっぱり同じように感じるでしょうから」

茉莉江は何を今さらという顔をした。

「まぁすぐにいなくなると思いますよ、役に立つのか当の本人が半信半疑ですからね」

では、と頭を下げると脇をすり抜けていった。

その背中を見ながら、

「…変なやつ」

意に介する風もないという様子で、会議室の方へと歩き出した。