【完】『道頓堀ディテクティブ』

穆と大二郎は、大阪へ戻った。

その晩は大二郎の葬式屋で請け負った独居老人の直葬というアルバイトで、

「ちょっと手間やけどしゃーないわな」

とぼやきながらも、遺品の整理会社の若者と部屋の後始末を始めた。

「まぁ探偵だけでは食うてゆかれへんもんなぁ」

それは仕方がない。

何しろ。

依頼がないのである。

が。

単純な肉体労働は、頭脳を日頃フルで活用する探偵の仕事には気分転換の要素を持っており、

「たまになら悪くないな」

思わず穆が漏らしてしまうほど、ユニークな作業内容でもあった。

衣類、日用品、文具、家電品、常備薬、新聞…と幾つかのジャンル分けをして、細々と袋に分ける。

「遺族の方からは、ゴミとして処分して良いとの許可があったんで、ゴミの分別に従ってください」

整理会社の若者からはそうした説明があり、ゴミゴミした部屋を少しずつだが、分別にかけてゆく。