【完】『道頓堀ディテクティブ』

その頃。

穆は相変わらずミナミで安穏な毎日である。

「穆さん、大丈夫なんですか?」

「あのね、まりあちゃん」

といってから、

「探偵なんて仕事は、暇な方が世の中が平和ってことなんやで」

逆に探偵だけ多忙で全員が横になっとったら問題やろ、と穆は、持論を展開した。

それだけに。

「あの被疑者は、もしかしたら冤罪かも知らんで」

という、過激派が聞けば卒倒しそうな見立てを、穆はしていたのである。

「じゃあ、穆さんは犯人は別にいる、と?」

穆は無言でうなずいた。

「一貫して否認するのは、真犯人か冤罪かどちらかしかない」

あまりにも動機が揃い過ぎている、と穆は指摘してみせた。

「まず場所が綺麗に重なり過ぎとる」

地図に碁石で次々置いてゆくと、被疑者の自宅や出入りする店と犯行の現場が、近すぎるのである。

「犯罪心理学の観点からゆけばこれは非常識や」

犯行は慣れた道を使わず、遺棄するのも土地勘はあっても二度と行かないであろう場所を選ぶはずや、と穆はいう。

「それに仮に被疑者が彼とすれば、わざわざ国花を使って国籍を明かす必要はない」

言われてみれば。

「疑問符が」

並んでしまう。

「つまり、これは被疑者を陥れる罠で、真の犯人は被疑者が逮捕されることでプラスを得る人物」

穆の目には、持ち前の考察力の鋭さが宿っていた。